うつ病になった友人Eとアルコール依存症の私

友人Eは大学時代の研究室の友人

ゲーム好きという趣味の一致で話が良く合い、一緒に飲みに行くこともあった

ただ、彼はあまり酒が強い方ではなく、酒よりもジュースが好きだった。

私は勝手に一人で飲み、彼とは好きなゲームの話でよく盛り上がった

そんな彼は、後にうつ病になり、私はアルコール依存症になった。

うつ病の発症

私と友人Eは、同じ研究室で似たような研究に取り組んでいたが、研究に対して、私は不真面目、彼も真面目というわけではなかった

過去の記事で先輩Mと私が研究をサボって、ウイニングイレブンを楽しんでいたことを書いたが、友人Eも研究せずにゲームをともに楽しんだ一人だ。

腕相撲の強い先輩Mとアルコール依存症の私腕相撲の強い先輩Mとアルコール依存症の私

しかし、研究において、彼と私が大きく異なることがあった。

研究で利用するプログラミングのスキルについて、彼のスキルは私とは比べ物にならないくらい高かった

彼は好きなものをとことん突き詰めるタイプなのだ。

プログラミングと同様、ゲームにおいても彼は熱心で、私もそこそこ上手いはずなんだが、彼には敵いっこない。

そんな彼は、ある日、そのプログラミング能力を買われて、自分の研究とは別のプロジェクトメンバーに抜擢される

彼のスキルに大きな期待が寄せられたのだ。

教授からは、彼に対して、

自分の研究さえ進めれば卒業はできるし、将来的に研究職に就くわけでもないのだから、大変にはなるけど、少し協力してくれればよい

くらいの説明があったらしい。

私であれば、その言葉通り、そこそこで済ますだろう

もちろん私にはそんな話は来ないのだが。

しかし彼は違った。

彼に与えられた課題はプログラムをひたすら書くこと

それは彼が大好きなことで、強くこだわることだった。

また、得意分野が評価され、期待されることが嬉しかったのもあったのかもしれない。

周囲の期待に全身全霊応え続けていた彼は、最終的には研究室に来られなくなってしまった

はじめは「最近あいつ見ないな」といった程度だったが、その後、先生から彼がうつ病で療養中であることを聞かされた。

当時、私も含めて、周囲の誰一人として、彼の責任感の強さに気づくことができなかった。

ひたすらプログラムを書かせ続け、彼を一度つぶしてしまったのは我々の所属していた研究室であり、先生・生徒問わず、その所属メンバーだろう。

就職後の再発

研究室に来られなくなってから、友人Eと仲良くしていた数人がローテーションで彼を迎えにいくことになった。

そういった対応が彼に対して、そして、うつという病気の患者に対して適切だったのかどうかはわからない。

彼は「ちょっと体調悪いから」といって来ないこともあったが、「今準備するから待ってて」といって来ることもあった。

そして、何とか卒業できた

就職先が違ったので、卒業後は疎遠になったが、程なくして、彼が会社に行けなくなったことを耳にした

その頃、たまたま、彼と時々やっていたゲームの最新作が発売されるということがあって、私は彼にそれとなく連絡してみた。

「一緒にやらないか?」といった感じだ。

それ以降、週に1度くらい、オンラインで時間を合わせて、彼とゲームをするようになった

スカイプで通話しながら、ネットワーク対戦を楽しんだ。

会話の中で、「今、また会社行けてなくてさ」といった話も聞いた。

療養中の再会

会社に行けなくなった友人Eは、実家に戻ってきた

私も帰省したタイミングで、彼と会うことになった

彼は「体調次第で直前で断ることになるかもしれない」と私に話していたが、当日、会えることになった。

対面するのは大学卒業以来で、かなり久しぶりだった。

相変わらず私は好き勝手飲んでいた

ただ単に酔いたい(酒が好き)というのもあったが、変に気を遣わず、昔と変わらず接することを意識していた。

そして、相変わらず私は酔いつぶれてしまった

ふと、鼻が異常に痛いことに気づき、我を取り戻した。

酔って寝ていた私の鼻の中に、彼が辛子(からし)を入れたのだった。

私は割と本気で怒ってしまった

「おまえ、ふざけんなよ」といった感じで、本気で気分が悪くなったのを覚えている。

なぜ笑い飛ばせなかったのだろうと、今でも後悔している

それは、自分の器の小ささ酒癖の悪さアルコール依存症が原因だと思う。

回復の兆し

それからも週1回程度のオンラインゲームで、彼とは交流が続いた。

彼は所属会社の回復プログラムに参加して、必死にしがみつき、粘っていた

しかし、最終的に再び症状が悪化し、退職することになる。

症状の悪化後は、連絡をとることができなくなり、そのまま数年、疎遠な状態になった

私はその間に、目に余るアルコール問題からアルコール依存症外来を受診して、アルコール依存症である診断を受けていた

あいつどうしてるのかな

たまに彼のことを思い出していたが、今から数ヶ月前に、突然彼の方から連絡が来たのには驚いた。

再就職のためのエントリーシートに目を通してみてほしいというお願いだった。

とても嬉しかった。

エントリーシートを見て、アドバイスをするために電話したが、話が関係のないゲームの話に逸れたりしながら、3時間程度も話し込んでしまった。

再就職先は、自分のことを理解して受け入れてくれて、自分も無理せずに働けるところを選びたいということだった。

次、会える日は

友人Eは現在、実家で療養しながら、まだ再就職先を探しつつ、クラウドソーシングサイトでプログラミングの仕事を受注して暮らしている。

「今度、また飲みに行こう」と彼は私を誘ってくれた

おう、行こう行こう

そう返したが、私は彼に、自分がアルコール依存症であることを打ち明けていない

彼は昔のような飲んだくれの私を期待しているのだろうか。

いや、違うだろう。

飲みに行った先で、減酒している姿を見せつつ、「おれも実はさ…」と言って、自分がアルコール依存症で治療中であることを打ち明けようと思っている

私はアルコール依存症なり、友人Eはうつ病になった。

この2つの事象に相関はないはずだ。

でも、互いに病気と戦っているのは同じだろう。

出会ったころには想像だにしなかったが、互いに病気と戦っている戦友として、私は彼を勇気付けたいし、私も勇気をもらいたい

でも、それはもう少し先の話。

彼に会うのが今から楽しみだ。

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