アルコール依存症になると、酒の優先順位が、家庭や仕事などを超えて一番になると聞く。
自分の感覚として、酒を最優先に生活していたとは思えない。
でもアルコール依存症なので、酒が最重要だったのだろう。
どういうことなのか。
ちょっと考察してみた。
効率
何をするにしても、私はできる限り効率を重視しているつもりだ。
効率を高めるためには個々のタスクの優先順位付けが効果的だ。
仕事を例にすると、まず、ざっくり「今やるべき仕事」「後回しにしてよい仕事」「やらなくてよい仕事」の3つに分ける。
「やらなくてよい仕事」は、この時点で完了。
やらないと決めることも、効率を高めるために必要だ。
次に、「今やるべき仕事」の中で優先順位をつけ、その順に処理していく。
「今やるべき仕事」がすべて処理し終わったら、「後回しにしてよい仕事」を優先順位に従って処理していく。
「後回しにしてよい仕事」が終われば、自分自身の勉強のために時間を使う。
1日は24時間で有限なので、できるだけ重要なことから手をつけて、効率を高めたい。
方針と実際の優先順位は違う
優先順位は事前に決められるのだろうか。
例えば、仕事の取引先ごとに、優先順位を「A社案件→B社案件→C社案件」と決めるようなことだ。
切り口は一例なので、仕事をしている方は、自分で思ったように分けてみてほしい。
A社案件は「今やるべき仕事」、B社案件は「後回しにしてよい仕事」、C社案件は「やらなくてよい仕事」とする。
これは、大まかな方針を決める際にはあり得るが、実際にここまで割り切って仕事できるかというと、無理がある。
現実的には優先度は仕事の内容次第で、一つ一つの独立した仕事を日々整理して優先順位付けすることになる。
A社案件が最重要と決めていても、B社案件の中の一つが、A社案件の中の一つよりも優先順位が高い場合だってあるはずだ。
これは人生においても同様だと思う。
つまり、例えば「家庭→仕事→趣味」と優先順位をつけたとしても、それは大まかな方針にすぎない。
ある一日を切り取ったときに、個々のタスクをその方針通りに処理できたかというと、必ずしもそうではないだろう。
酒の優先順位
さて、前置きが長くなってしまったが、アルコール依存症患者は酒の優先順位が最上位らしい。
つまり、例えば「酒→家庭→仕事→趣味」ということか。
アルコール依存症の私でも、こう書くと非常に違和感がある。
依存症の度合いによる部分も多少はあるだろうが、大まかな方針としてこうなることは珍しいだろう。
せいぜい「家庭→仕事→酒→趣味」くらいなら納得できるかもしれない。
ところが、ある一日を切り取るとどうだろう。
「今日は仕事の付き合いで遅くなる」と妻に伝えつつ、一人で飲み歩く。
前日の酒が原因で寝坊したり、二日酔いで仕事を休む。
これらは酒を家庭や仕事よりも優先した一例だが、この1日においては酒が最上位だったと納得できる。
そして、酒は飲み始めるとその優先順位が上がってくるから恐ろしい。
外で飲み始めるとき、「今日は早めに帰ろう」と思っていることはよくある。
そうであっても、一杯飲むごとに「もっと飲みたい」と思い、優先順位がぐんぐん上がる。
競馬でいうと「追い込み」だ。
最後の馬力がすさまじい。
私も含めて、アルコール依存症の初期の方であれば、おそらく人生の大半の時間で酒の優先順位が最上位ではないので、「アルコール依存症になると酒の優先順位が一番になる」に違和感を覚えるのだろう。
違和感の原因は、方針と実態の相違だった。
今さら感。