アルコール依存症の治療が上手くいくストーリー。
それは、断酒や減酒に成功するということに置き換えられる。
成功するストーリーは読みやすいが、失敗するストーリーは読みにくい。
それでも、失敗するストーリーを事前に網羅的に用意すること、そして失敗後の自分の行動まで想定しておくことで、アルコール依存症の治療が上手くいく可能性を高められると思われる。
軌道修正
ITエンジニアの方とお話する機会があった。
その方の仕事は、インターネット上で動くシステムをプログラミングして作ることだ。
システムを作る上で大事なことは「止まらないこと」らしい。
これはアルコール依存症の治療でも同じだと感じたので共有したい。
例えば、はじめは1で、毎日夜12時になって日付が変わると1ずつ数字が大きくなる(足される)システムを考えてみる。
今日が11なら明日は12になる。明後日は13になる。
これが上手くいくストーリー。
正常系だ。
ただ、この想定だけでシステムを作ってしまうのは三流のITエンジニアらしい。
システムがエラーになったときの処理をどこまで過不足なく検討できているかで、その質が決まるようだ。
つまり異常系の検討だ。
数字の足し算の例に戻ると、これは夜の12時に1を足すという単純なものだが、何に1を足すか、つまりA+1のAの値は何かしらの形で覚えて置かなければならない。
このAの値を読み出せないときにはどうしようか。
0+1にしてしまうのが良いか。それとも「エラー」と表示するのが良いか。
しかしこれでは翌日からも引続き不正確な数字が出てしまう。
Aを読み出せなかった原因が何かにもよるだろうが、もう一度Aを読み出す、つまりリトライするのは良さそうだ。
その他にも、例えば、A+1をした結果をうまく保存できないこともあるかもしれない。
そうすると、A+1をしたのに、保存されている値はAのまま。
次の日の処理はどうしようか。
変わらずA+1なのか。それとも、A+2にするのが良いのか。
もしくは、保存できなかった時点でもう一度保存してみる。
やっぱりリトライの処理は有効そうだ。
それでもエラーになる場合は、システムエラーの通知をエンジニアに飛ばす仕組みを作っておけば、エンジニアによって原因究明し、再び正常系に戻れそうだ。
何が言いたいのかというと、不測の事態が起こった際に、システムとして軌道修正できる機構を用意しておくことが、「止めない」ためには重要だということだ。
断酒できるストーリー
アルコール依存症の治療で「断酒」を想定してみる。
酒を飲まないストーリーを作るなら、「飲み会に行かなければ」「シアナマイドを飲んでいれば」「家族の監視があれば」など、いくつか考えられるだろう。
自分が飲まないストーリーを作るのは意外と簡単だ。
そのストーリーに乗ってしまえば、怖いことはない。
乗せ続けられたら、生涯断酒は成功だ。
しかし、これは理想論で、実際には様々なノイズが入るからややこしい。
断酒できないストーリー
不測の事態の際には、どうするか。
「飲み会に行かなければ」という仮定が壊れたとき、どうなるだろう。
「飲む」になるのか?
「固い意思で必ず断る」というのは無しにしたい。
断れなかったという状況を想定しておくことで、不測の事態を軌道修正する柔軟な断酒システムとなる。
飲み会に行った場合、次の分岐は「飲む」「飲まない」があるだろう。
「飲まない」であればOK。
この可能性が高いとは思うが、もう少しお付き合い願いたい。
「飲む」であった場合はどうか。
その後はどういった人生の分岐になるだろうか。
「少量だけ飲んだ」「大量に飲んだ」だったり、「意識を保てる範囲で飲んだ」「意識が保てないほどに飲んだ」だったりが考えられる。
「意識を保てる範囲で飲んだ」場合は、明日からも断酒できそうか?
「意識を保てないほどに飲んだ」場合でも、明日からまた断酒できるのか?
止まらない断酒システム
今日の結果がどんなステータス(状態)で終わっていても、問答無用で明日はやってきて、明後日もやってくる。
大事なのは、今日のステータスによらず、また明日も断酒に挑戦することだろう。
上の例では「意識を保てないほどに飲んだ」が最悪の状態。
次の分岐は「断酒をやめる」「もう一度断酒に取り組む」としよう。
「断酒をやめる」の分岐に入ってしまうと、アルコール依存症の治療の終了を意味する。
この分岐は非常に大切だ。
「もう一度断酒に取り組む」の分岐に進もう。
ただ、同じ失敗がチラついてしまうと、再び断酒にチャレンジする勇気が持てないかもしれない。
では、その先まで事前に検討しておく。
まず、二日酔いでも治そうか。
次に想定できる動きとしては、できる限り早く家族と話し合ったり、週末の断酒会に参加したり。
私の場合は、こうしてブログを書いて、あれこれアルコール依存症のことを考えることが、次のステップだったりする。
何でも良いと思うが、意識が正常な状態で自分自身が上手くいくと思う行動を用意しておくことが重要だ。
そして、トラブル時は事前に決めたことを淡々と行うのが良い。
アルコール依存症の離脱症状として「酒が切れるとうつに似た状態になる」というものがある。
なので、トラブル時の感情で判断するべきでない。
トラブル時には何も考えることなく、感情が正常なときに決めておいたことを淡々とシステマチックにこなすのが吉だ。
私も今まさに自分の減酒システムを作っているところだ。
アルコール依存症の方には、止まらない断酒システムや減酒システムを自分の中で作り上げてほしい。