断酒というとアルコール依存症治療の印象が強いですが、実は断酒にはそれ以外にも大きなメリットがたくさんあります。
このページでは、断酒の効果をメリット・デメリットに分けて説明しています。
断酒にはデメリットもありますが、それ以上に大きなメリットがあるのです。
なぜ断酒が困難なのか、その原因は何なのかについても掘り下げて解説します。
断酒のメリット
断酒のメリットは数え切れないほど多くあります。
身体の健康上のメリットとしては、特に女性にとっては小顔効果、ダイエット効果、肌荒れ改善などの嬉しい効果が期待できます。
実際、4年間連続飲酒を続けていた20代前半の女性が3週間断酒(禁酒)を行うと、以下のような変化がみられました。
- むくみが取れて顔が小さくなる(小顔効果)
- 体重が減る(ダイエット効果)
- 肌の状態が良くなる(ニキビの減少、乾燥肌が改善)
- 体臭が改善される
- 吐き気や嘔吐を催すような咳が出なくなる
- 血圧や肝臓の数値が正常に戻る
- 食欲増進
- 記憶力が良くなる
- 階段を上っても息切れしなくなる
- 朝までぐっすりと眠れるようになる
- 寝汗がなくなる
- 寝起きが良くなる
これらの元の身体に戻ることで起こった変化です。
酒に含まれるアルコールは、体内に吸収された後、アセトアルデヒドという毒素へ変化します。
毎日酒を飲み続けていると、肝臓で分解しきれなかった毒素が少しずつ体内に溜まっていき、身体のあちこちに不調をきたします。
酒を飲むのをやめれば、体内に溜まっていた毒素が全部排出されるので、身体に良い変化が起こります。
また、断酒をすることで肝臓の機能が正常に戻るので、肝機能が原因のうつ症状が改善する効果も期待できます。
また、身体の健康面以外にも大きなメリットがあります。
- 酒を飲んでいた時間を他のことに充てることができる
- 二日酔いがない
- それに伴う仕事の遅刻や欠席がない
- 仕事の作業効率が改善する
- 家計の支出を抑える
- 酒の失敗によるリスクが無くなる
節度を持った飲酒ができる方からすると、これらはピンとこないものもあるかもしれませんが、アルコール依存症患者からすると、これらの改善はとてつもなく大きいものではないでしょうか。
酒の失敗によるリスクと言ってしまうと幅広いですが、財布やケータイを無くしたりすることから、最悪の場合、飲酒トラブルで刑事事件に発展したり、家族に見放され家庭が崩壊したりすることまで、あり得ます。
また、酒を飲む時間や、飲みすぎによる二日酔い、それに伴う遅刻や欠席、作業効率の低下など、酒によって連鎖する悪影響を根幹から断つことができます。
飲酒による浪費は青天井なので、家計の支出を抑える面でも効果的です。
断酒は難しいですが、代わりに得られるものは、どれも非常に有意義で魅力的なものばかりです。
ここで紹介したメリットは一例に過ぎず、もっともっと色々なメリットがあるでしょう。
断酒のデメリット
一方、断酒にもデメリットはあります。
職場や周囲の人間関係によっては、断酒するのが困難な人がいるでしょう。
一つずつ見ていきましょう。
- 職業上、飲み会が多い人は断るのが大変
- 取引先と飲むことでコミュニケーションを取る職種の人だと仕事に不利
- 飲み会で素面のままでいなければならない
- アルコール・ハラスメントの被害に合いやすくなる
- 周囲から「つい最近まで飲んでいたのに」と怪しまれる
- アルコール依存症であることがバレる恐れがある
- 酒で繋がっていた人間関係が疎遠になる
日本では仕事の付き合いで飲酒をすることが頻繁にあります。
ときには「飲むと打ち解けやすくなる」という理由から、仕事の延長として取引先と飲みの場で親睦を深めて、その後の仕事のお付き合いを狙うこともあります。
どうしても飲酒をしなければやっていけない環境下にある人にとっては断酒しづらい状況です。
仕事や周囲の人間関係によっては、断酒のデメリットを大きく感じてしまう人もいるでしょう。
断酒ができない!断酒を阻む要因とは?
断酒を困難にしている要因には、日本社会に染み付いた酒に関する固定観念と、アルコール依存症への強い偏見が関連しているのではないでしょうか。
日本には「仕事で飲めない奴はダメな奴だ」「酒に弱いとなめられる」などといった飲酒に関する固定観念がまだまだ深く根付いていると感じます。
そして、飲み会などの飲酒をする場面で、暗黙のルールを強要することがあります。
これらの行為はアルコール・ハラスメント(アルハラ)と呼ばれ、飲酒の強要や酔って絡むなどの飲酒に伴う嫌がらせ行為です。
近年はアルハラが職場や大学などでも問題視されており、報道でもしばしば取り上げられています。

アルコール依存症患者の中には、このようにやむを得ない事情で病気になってしまった人も存在します。
こういった方に対して、今まで「飲め飲め」と飲酒を勧めてきた人が「だらしがない」「自己責任」などと非難するのは身勝手なものです。
アルコール依存症患者にとって、そもそも断酒は困難なものですが、現代の日本社会はそれをさらに困難にさせているのです。
もちろん、アルハラ被害でアルコール依存症になってしまった人は一部で、自発的な飲酒でアルコール依存症になった人が大半ではあります。
何を隠そう、私は決してアルハラ被害者ではなく、自発的な飲酒でアルコール依存症になった自業自得タイプです。
家族や職場には多大な迷惑をかけましたので、私に関しては非難はされてもしかたがありません。
そして、迷惑をかけられた側からすると非難したくなるのも当然です。
「病気なんだから非難するな!」というのは、個人的には全く違うと思いますが、不幸にもアルハラ被害によって依存症となってしまい、そんな状況でも仕事を辞められず、結果断酒できずに悩んでいる方が存在することも、どうかご理解いただけると幸いです。

減酒治療は断酒できない人のために
アルコール依存症の治療の原則は断酒ですが、先にも述べた通り、断酒ができる現状ではないという人もいます。
周囲のアルコール依存症への強い誤解・無理解があったり、
仕事上どうしても飲み会に参加しなければならなかったり、
取引先から強く酒を勧められたり、
病気のことを打ち明ければ解雇の恐れがあったり、
ハラスメントの声が上げられなかったり。
断酒には少なからず周囲からの手助けが必要です。
そのため、上記のような状況下にある人は「断酒が困難である」と言わざるを得ません。
そんな人のために、減酒治療が存在します。
減酒治療とは、文字通り「飲酒量を減らすことで、アルコール依存症になるリスクを下げる治療方法」です。
減酒治療はアルコール依存症の外来受診の抵抗感を減らします。
アルコール依存症患者の多くは、断酒の難しさから治療を断念してしまいます。
断酒は継続できれば良いこと尽くしなのですが、飲酒欲求のコントロールが効かなくなってしまった患者にとって、酒を一切絶つという行為を継続するのはそれ自体が困難ですし、周囲が非協力的でなければなおさらです。
減酒治療は、断酒が難しい状況にあるアルコール依存症患者の方が少しでも治療に取り組みやすいように考案された治療方法。
断酒をするのが困難な状況にある方は、まずこちらの減酒治療にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
減酒治療については興味のある方はこちらをご覧ください。

まとめ
断酒は身体に良いこと尽くし。
数え切れないほどのメリットがあります。
メリットに惹かれた方は、ぜひ一度断酒に挑戦してみてください。
しかし、職場や周囲の環境から断酒のデメリットが目立ってしまう方もいらっしゃるでしょう。
もしあなたがアルコール依存症なら、最も良いのは断酒することですが、最も良くないのは治療しないことです。
断酒が難しい現状を抱える方は、まずは飲酒量を減らす減酒治療に取り組んでみてください。
私は断酒治療から減酒治療に切り替えて、現在も通院しながら減酒しています。
一度、減酒に取り組むと、断酒のハードルも不思議と下がるように感じます。
減酒についての詳しいことは次の記事でお話できればと思います。


