過去の記事では、アルコール依存症という病気が患者の家族にどういった悪影響を及ぼすのかをご紹介しました。

それを受けて、このページではアルコール依存症患者をサポートしようと決めた家族の方へ向けて、患者を実際にサポートする前段の「関わり方」や心構えを解説します。
結論から述べると、患者への対応を始める前に、家族の皆様の身体的および精神的な健康状態を整えることが最重要です。
誰かを支える、それもアルコール依存症患者となると、予想以上に労力を要します。
それでは、アルコール依存症患者との関わり方について解説していきます。
目次
ありがとうございます
アルコール依存症患者との関わり方(接し方、対応云々)について語る前に、まず、ご家族の皆様に、私はお礼を述べなければなりません。
家族の皆様であれば少なからず、患者が起こした問題で迷惑を被ったことが一度や二度ではないでしょう。
アルコール依存症という病気は、回復はするものの、生涯にわたって付き合っていかなければならない病気です。
また、「否認の病」と言われるだけあって、患者自身に「治療しよう!」という意思を持たせることが難しいです。

そんな状況にもかかわらず、患者を支えると決心してくださったご家族の方々に、一アルコール依存症患者として感謝を申し上げます。
ありがとうございます。
患者と関わる前の注意点
さて、アルコール依存症患者と関わる前に注意しておきたいことが3つあります。
- 自分自身を大切にする
- 相談相手を見つける
- アルコール依存症についての知識を持つ
一つ一つを見ていきましょう。
自分自身を大切にする
アルコール依存症患者と関わる上で最も重要なことは、自分自身を大事にすること。
共倒れは避けなければなりません。
多くの家族は、患者の飲酒トラブルや後始末に振り回されています。
これは「患者主体」の生活スタイルといえます。
しかし、これでは共倒れのリスクが非常に高いと思います。
共倒れを意識的に防ぎ、かつ、冷静な目で患者を見極めるためにも「自分主体」の生活を送る必要があります。
このような考え方を無責任に感じてしまったり、家族なのに見捨てて薄情だと思ってしまったりして、ついつい患者の世話を焼く家族は実際に少なくありません。
しかし、世話を焼く行為は、患者が自分自身の問題と向き合う機会を断ってしまうことにもつながりかねません。
だからこそ、患者に構うことより、まずは積極的に自分の時間を確保してください。
頭の中が患者のことでいっぱいになってしまっているのであれば、少し距離を取ってみるのも一つの手です。
「患者に構わないこと」によって、患者に自分自身の問題を自覚させ、自らの意思で治療をしようと働きかける効果も期待できます。
自分主体の生活スタイルで、自分を第一に考えた生活を送ってください。
相談相手を見つける
自分主体の生活の中では、自分の悩みを吐き出せる場所を作っておくことも重要です。
そうでなくともアルコール依存症は誤解されやすい病気。
「下手に話せば、周囲から色々と言われるのでは?」
という思いから患者を家族だけでどうにかしようとする人がいますが、これは危険です。
アルコール依存症の専門病院、保健所、家族会など、何でも構いません。
カウンセリングを行い、第三者に相談して手伝ってもらいましょう。
専門知識のない家族だけで、アルコール依存症患者の対応をやりきるのは無理です。
ひとりで抱え込まず、勇気をもって専門家の力を借りてください。
家族向け!カウンセリング・相談におすすめな場所
カウンセリング・相談場所としては以下の4つがオススメです。
- 保健所
- 精神保健福祉センター
- アルコール依存症専門外来
- 家族会
家族会はアルコール依存症の家族で構成されたグループで集まり、自分の悩みを話し合う場です。
家族会であれば、自分と同じ悩みを持つ人や同じ境遇の人とも出会えるので、安心して相談ができます。
また、病院へ行く場合は必ずアルコール依存症専門の病院へ相談してください。
アルコール依存症は他の精神疾患と誤診される可能性もあるため、余計な混乱を避けるためにも、必ずアルコール依存症の専門外来を受診するようにしましょう。
加えて、病院によっては家族向けに無料カウンセリングを行っている病院もあります。
ぜひ活用してください。
アルコール依存症の専門病院については、過去のページで扱っていますので、ご参考にしてみてください。

アルコール依存症についての知識を持つ
故事にもある通り、必勝の秘訣は敵を知ることから。
アルコール依存症についても同じことが言えます。
病気の正しい知識を持つことは、回復への近道です。
不治の病「アルコール依存症」症状概要でも紹介した通り、アルコール依存症は脳の病気。

いくら患者に酒をやめてほしいと懇願しようと、身体に悪いからと正論を説こうと、意味がありません。
なぜなら、脳がすでにおかしくなっているからです。
正しい知識は、患者への対応を見直すきっかけになります。
知っておくに越したことはことはありません。
家族への強い味方!家族会とは?
先ほどもチラッと説明しましたが、家族会は、アルコールに問題を持つ人の家族同士が集まり、自分自身の悩みを互いに話し合う場です。
家族会は、アルコール依存症患者を持つ家族の強い味方です。
「話し合うだけで何か変わるのか?」
と疑問に思う方もいるかもしれませんが、お互いの悩みを共有することで「悩んでいるのは自分だけではない」という強い安心感を得ることができます。
これは家族にとって大変心強いものです。
また、家族会に参加することで、病気についての新たな知識を入手できることや、似たような悩みを話し合うことで、自分の抱える問題の解決の糸口がつかめるといった効果も期待できます。
家族会への参加方法
家族会は匿名で参加できるものと実名で参加するものとが存在しますが、匿名で参加できるものの方が多い印象です。
参加する際には特に予約は不要で、自分が参加したいと思ったときに気軽に参加可能です。
参考 ミーティング家族の回復ステップ12会によって違いがあるかもしれませんので、興味のある方は近所の家族会をぜひ調べてみてください。
見捨てたくはないが、患者ともう関わりたくないという方へ
ここまでは、患者をサポートしたいという家族の方へ向けて、サポートの前段となる関わり方の心得を書きました。
しかし中には今までの辛い経験から「見捨てはしないが、自分が関わるのは嫌だ」と考えている方もいるでしょう。
こういった場合は、まず専門知識のある第三者を頼ってください。
病院の医師や保健所窓口の担当医等、カウンセリングを行っている第三者です。
彼らにあなたの本心を告白し、今後の対応について相談しましょう。
その後は、家族から相談を受けた医師がアルコール依存症患者を説得し、そのまま入院して治療という流れになることが多いです。
いずれにせよ、家族が無理をして自分たちだけで何とかしようとするより、第三者に介入してもらって、患者から距離を取りつつ冷静に対応するのが得策です。
なぜなら、患者を抱える大抵の家庭は、すでにいっぱいいっぱいであることがほとんどだからです。
ですから「もうこれ以上は無理」と感じたら、迷わず第三者に頼ってください。
近年は依存症専門病院による無料カウンセリングや電話相談、保健所も相談のための窓口を設けています。
悩んでいる方はそういった機関に、思い切って話してみてください。
相談までとはいかずとも「とりあえず誰かに話を聞いてもらいたい」「愚痴を吐き出したい」といったことでも構いません。
ともかく、自分の悩みを吐き出せる場所を探し出すことが重要です。
まとめ
一アルコール依存症患者の個人的な意見を述べます。
アルコール依存症患者は、少なからず自分がしでかした(ている)問題に気が付いていると思います。
気が付いているからこそ、目をそらそうと飲酒を続けるケースがあります。
家族の方からすれば、「気付いているならなぜ目をそらそうとするの?」と疑問に思うかもしれません。
その答えは簡単です。
現実を直視するだけの強さが患者自身には無いのです。
アルコール依存症患者は総じて弱い人間だと思います。
酒を止められないのはアルコール依存症という病気のせいというのも一理ありますが、そもそも病気になった原因は自分自身の弱さです。
そして、病気になった今でも自分の弱さを受け入れられないからこそ、また酒を飲むことで自分の弱さを誤魔化します。
無論、それが家族に迷惑をかける理由にはなりません。
病気であろうと、許されないものは許されない。
家族側からはアルコール患者に対して恨み辛みを言いたくなるでしょう。
でも、それは逆効果だったりします。
現実から逃げて酒を飲むアルコール依存症患者は、家族から注意されているという現実からも逃げ出します。
気を紛らわそうと、さらに酒を飲みます。
酒を飲んでいるのは、病気だから?弱いから?
もう両方でしょう。
それほどに、どうしようもないほど狂ってしまっているのです。
正論や懇願は無意味と思ったほうが無難です。
ただ、アルコール依存症という病気は回復します。
現状を何とか好転させたいと考えている方は、まず自分主体の生活スタイルを築くことに注力してください。
それは患者と距離を取ることにつながり、冷静に判断できるようになります。
そして、遠慮なく第三者(専門家)を頼ってください。
きっとあなたに手を貸してくれる方がいるはずです。

