「酒を飲むと免疫力が上がる」という言葉を聞いたことがある方はいるでしょうか?
実はこの言葉、ある意味正しくもあり、間違っています。
「酒は百薬の長」という言葉の通り、酒には循環器疾患の予防や善玉コレステロールを増加させるなど、身体に嬉しい効果があります。
しかし、これはあくまで少量の酒の場合。
どんな良薬といえど、飲み過ぎれば人体にとって毒となります。
このページでは、酒を飲むことで人体に、特に免疫力に対し、どのような影響が生じるのかについて調査し説明します。
「飲み過ぎると免疫力が下がるは本当なのか?」
「どうして免疫力が下がってしまうのか?」
酒に含まれるアルコール、それを分解する肝臓は人体にとって重要な臓器です。
その機能が損なわれるとどうなってしまうのか、そのメカニズムを徹底解説します!
酒を飲むと免疫力が上がるのウソ・ホント
冒頭でも述べた通り、これまでの研究によると少量の酒は健康に良いことが判明しています。
とはいえ、これはすべての病気に言えることではありません。
高血圧や脳出血の場合だと、飲めば飲むほど死亡リスクが上がるという正比例関係を示しますし、肝硬変の場合だと指数関数的に死亡リスクが上がります。
しかし、虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病などの場合だと、非飲酒者に比べて少量飲酒者のリスクがむしろ低く、飲酒量が増えればリスクが高くなるというJカーブパターンをとるのです。
このJカーブ、またはUカーブとはグラフの形のことを指します。

このように、虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病などの病気だと、酒をまったく飲まないより飲んだ方が健康に良いことが分かっています。
つまり、特定の病気に関しては、「酒を飲むと免疫力が上がる」は「ホント」なのです。
ただし、これは少量に限ります。
具体的にどのぐらいの量かは個人差によりますが、少なくとも休肝日もなく毎日飲むような生活は健康的ではありません。
そういう点では「ウソ」と言えます。
「酒を飲むと免疫力が上がる」はウソでもありホントでもあるのです。
飲めば飲むほど免疫力は下がる!?
上のグラフにもあるように、飲み過ぎればリスクはどんどん上昇します。
特に酒に含まれるアルコールを分解する肝臓への負担は大きく、飲めば飲むほど健康リスクは跳ね上がります。
「え? 肝臓が悪くなるとどうして免疫力が下がるの?」
と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は肝臓は免疫にとても重要な役割を果たしています。
というのも、肝臓が果たす大きな3つの役割が関わってきます。
- 代謝
必要な栄養素を利用しやすい物質にして貯蔵する - 解毒作用
身体に不要・有害な物質を分解して排出する - 胆汁の生成・分泌
脂肪とタンパク質を吸収しやすくする
注目していただきたいのは2つ目の解毒作用です。
肝臓には「クッパー細胞」や「NK(ナチュラルキラー)細胞」と呼ばれる免疫細胞が存在しており、体内に侵入した異物(細菌・ウイルス)を排除してくれます。
これらの免疫細胞は肝臓に大量に存在しており、常に人体を病気から守ってくれています。
ここまで聞くと、肝臓が悪くなれば免疫力が下がるのは納得できるかと思います。
肝臓は、いわゆる免疫機構の本丸とも呼べる非常に重要な臓器なのです。
「沈黙の臓器」肝臓の機能障害はわりと深刻
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるだけあって、何かしらの問題が起こっていても発覚しづらいという特徴があります。
というのも、肝臓は先に述べた通り非常に重要な臓器なので、ちょっとやそっとのことでは壊れないようになっているのです。
この耐久性の高さがときに仇となります。
要するに、患者本人が自覚したときにはすでにダメージが深刻である可能性が高いのです。
かなり肝硬変が進んでいるにもかかわらず、それらしき症状が出なかったというのはよくある話です。
こういった肝臓の悪化は血液検査で発覚するケースが多く、AST(GOT)、ALT(GPT)が上昇していると肝細胞が現在壊れつつあることを示しているといいます。
健康診断などでおなじみの血液検査ですが「あ~、今回は肝臓の数値がちょっとヤバかったなぁ。酒、ちょっと控えるか」なんて言っている場合ではありません。
本当にヤバい可能性があります。
血液検査の結果には十分注意するようにしてください。
このサインが出たら要注意!肝臓が弱っているサイン
肝臓が弱ってきているときのサインには以下のものがあります。
- 皮膚や目の白目の部分が黄色くなる
- 尿の色が褐色、もしくはオレンジ色っぽくなる
- 常にだるい
- 食欲がない
- 吐き気がする
- むくみ
察しの良い方は気付かれたかもしれませんが、これらの症状は二日酔いの症状によく似ていますよね?
つまり、二日酔いになるということは肝臓が処理しきれないほど酒を飲んでいることでもあり、肝臓が弱っている状態でもあるのです。
また、人によっては肝臓あたり(あばら骨の右下)が痛むという場合もあるようですが、肝臓の極端な腫れ・巨大な腫瘍(ガン)ができない限りは痛みが出ません。
というのも、痛みを感じる神経は肝臓表面にしかなく、極端に張れるか巨大な腫瘍で肝臓表面が伸展しないと痛みを感じないのです。
中には7センチメートルもの巨大な腫瘍ができていたにもかかわらず、無症状だったなんてケースもあります。
たかが二日酔い、されど二日酔い。
二日酔いになってしまったときは、休肝日をつくって肝臓を休ませるようにしてください。
そして、その休肝日にイライラしてしまう、寝つきが悪いという方はさらに要注意です。
これらの症状はアルコール依存症の初期症状、もしくはプレアルコホリズム(アルコール使用障害)の症状だからです。
こちらに関しては飲酒への強い執着…アルコール依存症の初期症状にて紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

まとめ
酒にまつわる言葉・ことわざはたくさんありますが、少なくとも「酒は百薬の長」という言葉には「※ただし少量の酒に限る」という注意書きが必要でしょう。
大量の飲酒は肝機能を低下させ、それは免疫力の低下に直結します。
また、肝機能が低下しても無症状のことは多く、血液検査やレントゲンでないと発見できないことが多いです。
そして、肝機能低下のサインは二日酔いとよく似ています。
二日酔いになってしまったときは必ず休肝日を設けましょう。
そのうえで、休肝日でも飲んでしまうという方はすぐにアルコール依存症専門の病院を受診してみてください。
近年では一切飲酒しない「断酒」だけでなく、飲酒量を減らす「減酒」によるアルコール依存症の治療も増えています。
以前よりは治療のハードルが下がっていますので、気軽に相談しに行ってみてください。

