アルコール依存症を本格的に治療するとなれば、入院することも選択肢の1つです。
入院治療は、短期間で集中して治療できるという大きなメリットがありますが、「入院生活ってどんな感じなの?」と不安に思われる方も多いはず。
そこで今回は、実際にアルコール依存症を治療するために入院した経験者の体験談をもとに、入院生活を赤裸々にお伝えしたいと思います!
「入院中は外に出られない?」
「持ち物制限が厳しいってほんと?」
「入院中は何をやらされるの?」
そんな疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。
まず入院するために必要な手続きを済ませよう!
入院すると決まったら以下のことを済ませましょう。
- 職場への連絡、引継ぎ
- 行政が行っている助成金・手当ての申請
- 会社が行っている手当ての申請
- 持ち物の準備
- 家族・支援者への連絡
- 入院に関する病院での手続き・誓約書の記入
入院は数ヶ月に及ぶものが多いです。
そのため、職場や家族・支援者への連絡は必ず済ましておきましょう。
また、行政や企業が行っている助成金や手当てを利用し、入院費を押さえることも可能です。
入院前に利用できるものがないか確認しておきましょう。

入院する際に病院でおこなう手続きには保険証・印鑑・保証金(5万円 ※入院先によって変動あり)が必要です。
保証金は退院時に精算してもらえます。
また、入院費は退院時に精算することが多いので、それまでに用意すれば大丈夫です。
休職を伴う入院に関しては、以下を参考にしてください。

持ち物制限はかなり厳しい!
持ち物に関しては入院先によっても異なりますが、小石さんの入院先では以下の指定がありました。
- ひも状の物や刃物の持ち込み禁止
- 割れ物禁止
実はこれ、誰かに危害を加える&自傷行為防止のための配慮です。
アルコール依存症治療では、アルコールを体内から完全に抜くための期間を設けます。
離脱症状が最もひどく出る期間でもあります。
これまでの記事を読んでいただいた方であれば、離脱症状の恐ろしさは十分知っていると思います。

幻聴や幻覚といった症状に見舞われ、最悪の場合、自殺を図ろうとしてしまうほどのうつ状態に陥ってしまう方もいます。
そんな状態になってしまう患者のため、万が一のことが起きないよう、こういった配慮がなされているわけです。
洗面用具も割れないプラスチック製のもの。
ベルトやネックレスといったアクセサリー系はもちろんのこと、パーカーやズボンについているひもや靴ひももNGです。
音楽プレイヤーやゲームなどの電子機器も持ち込めません。
スマートフォンは使用できますが、就寝前になったら看護師に預けるのが原則です。
問題なく持ち込める物は、
- ひもがない衣服
- 洗面用具
- 筆記用具
- コインランドリーや散髪、売店で使用する現金
- 洗剤
- 読書用の本
ぐらいです。
入院生活
さて、入院中はどんな日常を送ることになるのか?
入院先によって異なる部分もありますが、小石さんの場合、5つの段階がありました。
身体に異常がないか検査します。この期間に体内のアルコールを排出してしまいます。
病棟内で行われる作業療法やリハビリテーションに参加し、身体を動かしながら飲酒によって低下した身体機能の回復を図ります。
アルコールを体内から完全に排出し、身体機能も回復して自身を振り返る余裕ができてきます。現実を直視し、これからどうやって病気と向き合っていくか、病気の知識を学びつつその方法を学んでいきます。
身体状態を再確認しつつ、どうやって社会復帰していくかを考えます。自助グループへの参加や、場合によっては就職支援までおこなってくれます。
アルコール依存症は退院してからが本番です。定期的な通院をしつつ、アルコール依存症という脳の病気と向き合っていきます。
という流れなので、今回ご紹介する入院生活は3の入院安定期の暮らしです。
ではさっそく、1週間と1日に分けて見てみましょう。
1週間のスケジュール

「これなに?」と思われた方のためにいくつか解説します。
全体ミーティングは文字通り、病院側から今日何があるのかの説明があります。外泊や外出予定がある方は名前を呼ばれて最終確認と注意事項の説明があります。
学習会は、アルコール依存症についての勉強会です。テキスト・資料は病院の方が用意してくれます
作業療法は、運動や手先を動かす作業をすることで、心身の回復を図るリハビリテーションです。やることも多種多様で、塗り絵、革細工、ビーズ細工、陶芸、習字、ストレッチ、チューブトレーニング、スポーツレクレーションなどがあります。
自助会は、アルコール依存症患者によって行われる当事者会です。患者ならではの苦悩を正直に打ち明け、自分自身と向き合う方法を探ります。
精神療法は、いわゆるカウンセリングです。心理療法士の方に話を聞いてもらいます。
1日のスケジュール
1日の流れは以下の通りです。
お風呂・シャワーは男女で日ごとに時間が分かれていて、10:00~11:00、16:00~17:00の間に済ませてしまいます。
空いてる時間?
全部、自由時間です。
なので「マジで滅茶苦茶ヒマ」らしいです。
小石さん曰く、
「いやホント、読書や勉強するぐらいしかすることないです。今でこそスマートフォンがあるので助かりますが、それ以外のことは院内を散歩するぐらいでしょうか」
とのこと。
しかし、やることがないからこそ、自分としっかり向き合う時間が取れるともいえます。
ただボーッと過ごすのではなく、自分と向き合い、自分の置かれている現状と病気を把握して退院に備えましょう。
あと、これは余談ですが、入院中はカフェインが飲めません。
入院中に服用する内服薬に影響をおぼよす恐れがあるからです。
小石さんにはこれが一番堪えたとか…
小石さんは週に一度、外出で病院1階のカフェでコーヒーと読書を楽しむのが一番の楽しみだったようです。
依存症治療は退院してからが本番
アルコール依存症治療は退院してからが本番です。
アルコール依存症は脳の病気。
入院中は強制的に酒が手に入らない環境で治療できますが、退院してしまえば周囲に酒が溢れ返っている世界に戻ります。
コンビニでもすぐ酒が買えてしまうこの時代、酒を一切絶って生きていくのは至難の業です。
そんな中でどうやって病気と向き合っていくのか。
そこで役立つのが自助会です。
自助会にはすでに退院し、社会生活を送りながら病気と向き合ってきた先輩方がたくさんいらっしゃいます。
そういった方と交流を深めつつ、少しずつ飲まない世界に慣れていきます。
また、再飲酒(スリップ)をしても落ち込まないでください。
退院後の再飲酒はつきもの。
再飲酒したからといって「もうおしまいだ」なんて思う必要はありません。
いま以上に悪くならないように生きる
入院するにせよ、退院するにせよ、アルコール依存症治療は長い道のり。
なので【いま以上に悪くならないように生きる】ことを第一に考え、ともに前へ歩んでいきましょう。
自戒の念を込めて…