アルコール依存症の治療にかかる費用

いざアルコール依存症の治療を決意しても、治療費用がいくらなのか分からないままでは計画の立てようがありません。

治療の決心がつかない患者を説得するためにも、具体的な数字のデータ支援制度の情報は役に立ちます。

アルコール依存症は長い間付き合っていかねばならない病気ですから、しっかりと計画を立てて、着実に治療を行っていきましょう。

制作協力
このページの制作には、アルコール依存症初期で精神病院へ入院された小石(仮名)さんにご協力いただいております。小石さんは入院中に他の依存症患者の方と共に治療プログラムに参加されていました。現在は断酒での治療に取り組まれています

アルコール依存症の治療はどれくらいお金がかかるのか?

治療費用の構成の一例を示します。

アルコール依存症の治療費用は病気の進行具合や合併症の有無、治療方法(通院か入院か)などによって個人差が大きいため、あくまで一例として受け止めていただければと思います。

通院した場合

医療保険に加入をしている70歳未満の方の場合、医療機関の窓口でかかる費用は自己負担額の3割です。

初診時には初診料がかかります。

また、初診時に血液検査、点滴、薬剤処方を受けた場合は、初診料と合わせて約2,000~6,000円がかかることがあります。

さらに、総合病院や国公立病院などの大病院を受診した場合は、選定療養代として5,000円以上を追加で請求される場合があります。

依存症の進行具合にもよりますが、どのステージであっても最初の1か月間は週に1度の通院を勧められることが多いです。

症状が緩和すれば1か月に一度の通院で済みます。

通院で使われる薬剤には

  • 抗酒剤(シアナミド、ジスルフィラム )
  • 睡眠薬
  • 抗不安薬
  • 飲酒欲求を抑える薬(セリンクロ、アカンプロサートなど)

が使用されます。

近年では飲酒欲求を抑えるセリンクロ、アカンプロサートなどを、抗酒剤と併用することが多くなりました。

特に飲酒をしている人でも飲酒欲求を抑えられるセリンクロは、新たな治療薬として注目を浴びています。

ただし、セリンクロはアカンプロサートの6倍以上の値段がするため、治療にセリンクロを使用する場合は費用が高くなります。

なお、私は断酒ではなく減酒による治療を行っておりますので、抗酒剤は利用せずに、セリンクロのみを服用する治療に取り組んでいます。

減酒については、今後別途記事にしますので、そちらをお待ちください。

今回は、44歳の医療保険に加入している男性が、制度を利用せずに、アルコール依存症のみ(合併症の併発は無し)を断酒で治療する想定で、治療費を計算してみました。

1週間に一度の通院を3か月間(93日間)続け、抗酒剤のシアナミド、アカンプロサート、睡眠薬(ベルソムラ)を使用した場合の費用は次のようになります。

  • 初診料:6,000円
  • 2回目以降の診察料:1,200円 x 13 = 15,600円
  • シアナミド:7.1円 / mL × 7.5mL(服用量)× 93 = 4,952円
  • アカンプロサート:48.3円 / 錠 × 93 =4,491円
  • ベルソムラ:90.8円 / 錠 × 93 = 8,444円
    → 合計:39,487円

メリット

  • 入院するより費用を抑えられる
  • 行動の制限が少ないため、勤務しながらでも治療ができる

服用する薬の種類や量によって値段は変動しますが、入院するより通院の方がはるかに費用を抑えられます

また、行動の制限もほとんどないため会社勤めの人でも治療に取り組みやすいです。

仕事に穴をあけずに、周囲に隠したまま治療を受けられることから、最初は通院という選択を取る患者さんは多くいらっしゃいます

デメリット

  • 治療を途中でやめてしまうリスクが高い
  • 再飲酒の恐れがある

通院は飲酒行動の制限が少ないため、治療中に医師の言いつけを破ってしまう患者さんは少なくありません。

つまり、治療を中断してしまったり、再飲酒してしまうリスクがあります。

また、医師の診断によっては睡眠薬や抗不安薬といった向精神薬を処方することもありますが、これらとアルコールの併用は禁忌です。

お酒を飲んだ状態で向精神薬を服用すると、薬の効果が増長されて最悪の場合、死に至る恐れがあります。

通院治療まとめ

通院では飲酒欲求を自制しながら治療していく必要があります。

そのため、アルコール依存症初期の患者さんか、自分がアルコール依存症であるという自覚のある患者さんでないと続きません

逆に、アルコール依存症中期以降の患者さんや、アルコール依存症であることが認められない患者さんは入院治療をおすすめします。

入院した場合

入院も通院と同じく、医療保険に加入をしている70歳未満の方の場合、医療機関の窓口でかかる費用は自己負担額の3割です。

入院治療は室料食事料治療プログラム参加料などの内訳があります。

また、入院中に使用される薬物も通院治療で使われているものと変わりませんが、入院の場合は断酒が前提となります。

今回は実際に入院した小石さんの入院費の内訳を元に、入院費用を計算してみました。

小石さんの場合の薬物療法は、ベルソムラとベンゾジアピン系抗不安薬のソラナックスを服用するもので、毎日服用していました。

  • 入院費用:132,521円 / 1か月 × 3 = 397,563円
    – 食事料、室料、リハビリテーション・治療プログラム参加料など
  • ベルソムラ:90.8円 / 錠 × 93日分 = 8,444円
  • ソラナックス:13円 / 錠 × 93日分 = 1,209円
    合計 → 407,216円

メリット

  • 確実な治療が受けられるため断酒成功率が高い
  • 自分の現状・性質を学ぶことができる

入院治療の最大のメリットは断酒成功率が高いこと

これに尽きます。

インターネット上の情報や断酒会参加者の体験談から、断酒を10年以上継続することに成功した患者さんのほとんどが入院治療を受けています

また入院中、患者はアルコール依存症という病気の知識を学習しますが、それ以上に徹底した自己分析を行います。

「自分はどういった時に飲酒欲求が高まるのか」

「酒にはまったきっかけは何か」

「自分のコンプレックスは何か」

自己分析をおこなえば、万が一飲酒欲求が強まったときにも対処ができるようになります

加えて事前に対策を立てておくことで、飲酒欲求が高まるのを未然に防げるようにもなるのです。

デメリット

  • 治療費が高い
  • 行動が著しく制限される

入院費用は通院した場合の10倍近く高くなります

入院期間は自由に外出できず、外泊をする場合は担当医師の許可が必要になります。

もちろん仕事もできません。

入院治療のまとめ

通院は費用を抑えられる代わりに、失敗のリスクが高まります。

失敗して再び周囲に迷惑をかけてしまうこと考えると、入院して徹底的な治療を受けることには十分なメリットがあります

入院後も通院を受ける場合、申請さえすれば自立支援医療費を受けられるようになります。

自立支援医療費支給制度は、医療費が3割負担から1割負担になるお得な制度です。

入院費用が高いと足踏みをしている方は、自分がそういった制度の対象に入っているかの確認してみてください。

入院アルコール依存症の入院治療の流れ

保険は適用可能なのか?

入院の場合は保険が適応される可能性があります

保険会社やプランにもよりますが、医療特約のついているプランであれば「入院保険・手術保険」という保険が適用されます。

この入院保険金・手術保険金を受け取る場合は医師の診断証明書、もしくは手術証明書を提出する必要があるため、保険金請求前に担当の医師に頼んでおくといいでしょう。

アルコール依存症治療で利用可能な施策・制度

国や自治体が行っている施策・制度を利用することで、本来よりもずっと安く治療を受けることができます

アルコール依存症患者やその家族が受けられる施策・制度について詳しくご紹介します。

「しっかりと治療はしたいけどお金がない」と悩んでいる方は必見です!

自立支援医療費支給制度

自立支援医療費支給制度とは、アルコール依存症を含む精神疾患で、通院による精神医療を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費の自己負担を軽くする制度です。

この支援制度を受けられるようになると通常は3割負担のところが1割負担で済みます

対象となる精神疾患はうつ病や依存症といった精神疾患だけでなく、アルツハイマー型認知症や知的障害、心理的発達障害も含まれています。

これらの治療のために通院している、もしくはデイケアや外来、訪問看護を受けている人全員が支援対象者となっています。

手続きには以下が必要です。

  • 申請書
  • 医師の診断書
  • 世帯の所得状況が確認できる資料
    – 課税証明書や非課税証明書、生活保護受給証明書、健康保険証など

上記の3種類の書類を用意し、お近くの市町村の担当窓口で申請します。

申請書は窓口だけでなく、精神科であれば病院の待合室などにも置かれています。

市町村によっては条件に微妙に差があるので、申請前に市町村の担当課か精神保健福祉センターに問い合わせてみましょう

高額療養費制度

入院治療を検討している方におすすめの制度です。

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた(上限額に達した)場合に、その超えた金額を支給してもらえる制度です。

具体的にいうと、年収370万円未満の方は、ひと月あたり57,600円を超えると、超えた額を支給してもらえます。

この制度の利用方法は2つあります。

一つ目は先に自分で自己負担額を支払い、後日超えた分の金額を支給してもらう方法

後からお金が返ってくる仕組みです。

もう一つは高額療養費制度の証明書を提示することで、医療機関での支払いを上限額でストップさせる方法

この場合は、用意するお金が少なくて済みます。

申請には「健康保険高額療養費支給申請書」という書類を協会けんぽ支部に提出する必要があります。

まとめ

アルコール依存症患者の多くは「最初は軽い治療でいいだろう」と通院を選びますが、結局治療が上手くいかずに入院する羽目になる方は多くいらっしゃいます。

入院費用は決して安いものではありませんし、仕事に穴をあけられないといった理由でも、急な入院が難しいことは確かです。

しかし、アルコール依存症というのはお酒を飲み続けている限り、どんどん進行していく病気です。

進行を早い段階で食い止めるためにも、アルコール依存症初期の段階で徹底した治療を受けることが重要です。

もし入院か通院かで治療方法を迷っておられるのであれば、私は入院をおすすめします

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